~特大号~ブランド品のアレなぜ?コレなに?「”皮と革の違い””カーフやラム””ヌメ革やスエード”てなに?」(R3.4/24UP)

皮と革

バッグや財布などによく使用される素材の1つに「かわ」が挙げられますが、「皮」「革」では意味合いが全く違いますので、まずはその違いを明確にしておきましょう。

皮(skin)のイメージ

まず、「皮」というのは未加工の動物の皮膚を指します。未加工であれば生きた状態だろうが死んだ状態だろうが関係ありません。英語のskin(スキン)に対応します。

対して、「革」というのは皮から毛や脂肪などを除去し、更に「なめし加工」と呼ばれる腐敗を防いだり柔軟性を出したりする加工が施されたもののことです。英語の「leather(レザー)」「hide(ハイド)」に対応し、バッグや財布などに使用されるのはほぼ「革」です。

※ちなみに、「leather(レザー)」は小型動物、「hide(ハイド)」は大型動物の革という意味なので厳密には使い分ける必要がありますが、ここでは「レザー」に統一して記載します。

革(leather)のイメージ

本革のバリエーション

そんな革(レザー)ですが、その元となる皮が穫れる動物の種類性別年齢部位などによって実にさまざまなバリエーションがあり、これらは「合成革」と区別するために「本革」と総称されます。以下に、代表的な本革のバリエーションと特徴をそれぞれ簡潔にまとめてみました。

牛

本革①「牛革」

その丈夫さと加工のしやすさ、なにより食用(牛乳や牛肉)として飼育されるため個体数が多く、その副産物として安定した量が穫れる点で世界的に最もよく使われています。

牛革Ⅰ「ブルレザー」

生後2年以上の去勢されていない雄牛の革で、牛革の中で最も丈夫ですが柔軟性はありません。未去勢の雄牛は血気盛んでよく喧嘩するので、革に傷が付いたものも多いです。

牛革Ⅱ「ステアレザー」

生後2年以上の去勢された雄牛の革で、未去勢の雄牛と比べると柔軟性があります。牛革の中で最も一般的に使用される革と言われています。

牛革Ⅲ「カウレザー」

生後2年以上の出産経験のあるの革で、子牛と雄牛の中間くらいの丈夫さ・柔軟性を持っています。

牛革Ⅳ「カーフレザー」

生後半年以内の子牛の革で、成牛よりも柔軟性があり軽いです。子牛の革は上質で希少性が高く、高級ブランド品によく使用されます。

牛革Ⅴ「キップレザー(トリヨンレザー)」

生後半年~2年以内の子牛の革で、「カーフレザー」に次いで上質で希少性が高いです。

牛革Ⅵ「ベビーカーフレザー」

生後3か月以内の子牛の革で、非常に上質ですが、収穫量がかなり少ないため、希少性が極めて高いです。

牛革Ⅶ「ハラコ(腹子)」

胎児~生後間もない子牛の革で、基本的には出産前に亡くなった牛のお腹の中の胎児や死産した子牛からしか穫れないため極めて希少で、ほとんど流通しません。そのため、「子馬(ポニー)」の革を代用することが多いです。

本革②「豚革」

薄くて軽いのに丈夫で、通気性も抜群といった実用性の高さから牛革に次いで使用されることが多いと言われています。

豚革は「∴」のような独特な毛穴が特徴で、このおかげで抜群の通気性を発揮しているわけですが、このわかりやすい特徴のせいで日本では過少評価されがちです。しかし、ヨーロッパでは高級素材として認識されています。

豚革に見られる∴毛穴

豚革Ⅰ「アメ豚」

「アメリカ産の豚」という意味ではありません。豚革の表面を「アメ色」に染色したもののことを言います。

豚革Ⅱ「ピッグスエード」

豚の革を起毛加工(後述)したもので、この加工によって豚特有の毛穴を目立ちにくくすることができます。

本革③「馬革」

牛革と比べると丈夫さでは劣りますが、柔軟性に優れているので、ジャケットといった衣服類やソファーといった家具類によく使用されます。世界的にも生産量が減少傾向にあり、その希少性は上がってきています。

馬革Ⅰ「コードバン」

大人の馬から穫れる革を「ホースレザー」と言い、特徴は上記の通りですが、中でもお尻部分から穫れるこの革は1頭の馬からわずかな量しか穫れないため希少性が高いです。牛革の2~3倍の丈夫さを誇り、傷や汚れにも強く、なにより独特の光沢を持つため「革の宝石」と形容されることもあります。

馬革Ⅱ「ポニーレザー」

子馬から穫れる革で、質感が似ていることから「ハラコ」の代用とされることが多いです。柔軟性があり、牛革の半分くらいの重さにも関わらず丈夫さもあります。

本革④「ヤギ革」

知名度は低いかもしれませんが、れっきとした高級素材です。

表面にある独特な凸凹のシワのおかげで牛革より摩擦に強く丈夫で、加工の仕方次第では艶やかな光沢も出ます。更に、型崩れしにくく、使えば使うほど柔らかさも増すので非常に優秀な素材と言えます。

ヤギ革に見られる凹凸シワ

ヤギ革Ⅰ「ゴートレザー」

大人のヤギから穫れる革で、特徴は上記の通りです。ヤギ革といえばだいたいはこの革です。他の革に比べ手入れが比較的簡単なので、革初心者にはうってつけです。

ヤギ革Ⅱ「キッドレザー」

子ヤギから穫れる革で、「ゴートレザー」よりも更に柔らかいです。また、染色した際の発色が非常に良いです。しかし、生産量は限られていますので希少性は高いです。

ウールシープ

本革⑤「羊革」

温暖な地域に生息する直毛の羊を「ヘアシープ」、寒冷な地域に生息する巻毛の羊を「ウールシープ」と言います。多くの人が羊と聞いて連想するのは「ウールシープ」ではないでしょうか。

一般的に「ヘアシープ」は羊革、「ウールシープ」は「ムートン」に加工されます。「ムートン」にもなめし加工等は施されていますが、毛が残った状態ですので革ではなく皮(毛皮)の分類になります。「ウールシープ」から作られる羊革はあまり丈夫ではありませんが、非常に柔らかく、ヤギ革同様の凹凸シワのおかげで光沢もあり、なにより防寒性が非常に高いです。

ヘアシープ

羊革Ⅰ「ラムレザー」

生後1年以内の子羊の革で、特に上質なのが「エントレフィーノ」という品種から穫れます。「CHANEL(シャネル)」でお馴染みの「ラムスキン」の素材としてよく使用されています。

羊革Ⅱ「ベビーラムレザー」

生後半年以内の子羊の革で、「ラムレザー」より更に軽く柔らかく、希少性も高いです。ちなみに、生後1年以上の大人の羊の革を「シープレザー」と言います。

本革⑥「ダチョウ革」

鳥類で唯一量産可能な革で、丸いボツボツした突起が特徴的です。

これは羽毛を抜いた跡なので、1頭のダチョウでも羽が生える背中部分からしか穫れず、その希少性は高いです。この跡に対する加工法は主に2つあり、跡を隠すように染める方法とツヤを与えて跡を強調する方法があります。

ボツボツした突起=羽毛を抜いた跡
オーストリッチ(フル←→ハーフ)

ダチョウ革Ⅰ「オーストリッチ」

ダチョウの胴体から穫れる革で、跡がある背中部分と跡のないそれ以外の部分に分かれます。バッグなどの製品において、全体に跡があるものを「フルポイント」、一部に跡があるものを「ハーフポイント」と言ったりします。

ダチョウ革Ⅱ「オーストレッグ」

ダチョウのから穫れる革で、爬虫類のウロコのような模様と使えば使うほどツヤが出るのが特徴です。脚の革なので1頭から2枚しか穫れず、大変希少です。

本革⑦「ワニ革」

ヘビ革やトカゲ(リザード)革などの爬虫類革の中でも最高級とされるワニ革ですが、どんなワニでも良いというわけではありません。高級ワニ革とされるのは「クロコダイル」「アリゲーター」「カイマン」3種のワニから穫れたもので、ランク的には「クロコダイル革>アリゲーター革>カイマン革」となります。最高ランクのクロコダイル革が穫れる「クロコダイル」に属するワニは以下の4種で、これ以外のワニから穫れたものはワニ革ではあってもクロコダイル革とは言いません。

クロコ革Ⅰ「イリエワニ(スモールクロコ)」

最高ランク「クロコダイル」の中でも最高級の「ワニ革の王」です。「スモール」というのはワニの大きさではなく、ウロコの大きさを表しています。

クロコ革Ⅱ「ナイルワニ(ナイルクロコ)」

「スモールクロコ」と「ラージクロコ」の中間的なウロコの大きさを持っています。

クロコ革Ⅲ「ニューギニアワニ(ラージクロコ)」

その名の通り、大きめのウロコを持っています。

クロコ革Ⅳ「シャムワニ(シャムクロコ)」

他のクロコダイル革と違い、100%養殖なのが特徴です。

本革の加工法

動物から穫れた皮は脱毛・脱脂・なめし加工を経て革になるわけですが、革に施される加工はこれだけとは限りません。同じ革でも、その加工法(仕上げ)が異なれば見た目の印象物質的な特徴が変わりますし、複数の仕上げを組み合わせる場合もありますので、革のバリエーションは無数に広がります。以下に、革に施される代表的な加工法と特徴を簡潔にまとめてみました。

クロムなめし/タンニンなめし

そもそも、なめし加工には大きく2通りの方法があります。薬品を使う「クロムなめし」と薬品を使わない「タンニンなめし」です。

「クロムなめし」はその名の通り、「クロム化合物」という化学薬品を用いてなめす方法で、低コストで済むためほとんどの革はこの「クロムなめし」が施されます。対する「タンニンなめし」は薬品を使わない、植物由来の物質「タンニン」を用いたなめし方法で、高コストです。

この「タンニンなめし」が施された後、染色や表面仕上げ等の加工が何も行われないすっぴんの革を「ヌメ革」と呼びます。シワや変色などの経年変化(エイジング)がダイレクトに表れるため、きちんと手入れをする必要はありますが、使えば使うほどその変化で味わいが深まります。

ヌメ革(未使用←→2年使用)

オイル含侵

なめしの段階かその後にオイルを含ませて、より柔らかく、丈夫にする加工です。オイルレザーは比較的手入れも楽で、エイジングも楽しめます。

エナメル塗布

革の表面にエナメル塗料を塗布する加工で、独特の光沢感と硬質感を生み出します。エナメル(パテント)レザーは耐汚性と耐水性にも優れ、手入れも比較的簡単なので革初心者におすすめです。

革の表と裏

起毛加工

なめした革をサンドペーパーなどで擦って毛羽立たせる加工で、革のどちらの面に施すかによって呼び名が変わります。

そもそも、革には表と裏があり、表の光沢がある面を「銀面」、裏のざらざらした面を「床面」と言います。「銀面(表面)」を起毛加工したものを「ヌバック」、「床面(裏面)」を起毛加工したものを「スエード」と区別します。

この2つのうち、よく見聞きするのは「スエード」の方だと思いますが、これは一般的に豚革の裏面で作られています(ピッグスエード)。あまり馴染みのないであろう「ヌバック」は一般的に牛革の表面で作られており、こちらの方が高級素材とされています。

「スエード」は薄くて柔らかく起毛感が強い、「ヌバック」は起毛感は弱いが丈夫で、エイジングを楽しめるという特徴があります。ただし、どちらも汚れに対しては弱いですので取扱いや手入れには注意が必要です。

スエード←→ヌバック

銀付き(グレイン)

革の銀面(表面)に脱毛・脱脂・なめし・染色といった最低限の加工だけを施すことで革本来の個性(模様や毛穴など)を活かす加工です。表面処理等で傷やシミを隠せないグレインレザーは元よりそれら欠点のない革を厳選する必要があります。そうなると幼い動物、しかもその体の中でも無欠点な部分からしか穫れませんので、希少性は非常に高くなります。

銀面除去

革の銀面を除去し、そこに合成樹脂などを塗装する加工で、高い耐水性とガラスのような光沢を生み出します。粗悪な革でも表面を除去してしまえば傷やシミは消えるため比較的安価で供給され、塗装のおかげで手入れも楽という利点があります。裏を返せば、革本来の個性も一緒に消してしまったり塗装のせいでエイジングしにくくなったりと革本来の味を楽しめなくなるという欠点もあります。

型押し(エンボス)

なめした後、革の表面をプレスすることで模様付けする加工で、合成革などの比較的安価な素材に高級素材を模した型押しをすることで、安価で高級感を演出できるという利点があります。その最たる例として、エンボスレザーはしばしばクロコダイル革を模して作れますが、本物と違いウロコが均一すぎたり、手触りが違ったりといった特徴があります。

ちなみに、牛革に細かい凹凸模様を型押ししたものを「サフィアーノレザー」と言い、これを使った「サフィアーノ」というシリーズは「PRADA(プラダ)」の代名詞となっています。

収縮加工

なめしの段階で特殊な薬品に浸して、革の表面を収縮(シュリンク)させることで革本来のシワを強調させる加工です。シュリンクレザーは柔らかく、傷が目立ちにくくなります。ちなみに、薬品を使わず手でシュリンクしたものを「もみ革」と言います。

ブライドルレザーと白い模様

蜜蝋含侵

タンニンなめし、染色を経た後、数カ月にわたって蜜や蝋を染み込ませる加工で、手間がかかるため非常に高価です。馬の顔に装着する「ブライドル」という馬具のために考案されたもので、断トツの丈夫さと美しいツヤ、表面に浮き出た白い模様が特徴です。この模様は細部まで染み込んだ蝋が表面に出てきたもので、良質なブライドルレザーの証です。