宝石のメイクアップ「カット」
宝石は掘り出された原石のままだとさほど輝きません。最高の輝きを誇る「ダイヤモンド」でさえ適切なカットが施されて初めて眩い輝きを発揮するのであって、カット技術がまだ発達していなかった時代においては「エメラルド」などの単純に色がはっきりした石の方が重宝されたほどです。それくらい、宝石にとってカットというものはその価値を左右する重要な要素なのです。
カットの種類
宝石にとって命ともいえるカットにはさまざまなバリエーションがありますが、大別すると「ファセットカット」と「カボションカット」の2つに集約されます。
ファセットカット(facet cut)
「ファセット(facet)」というのは要するに「面」という意味です。小さな面がいくつも接しあうようにカットされているので「ファセットカット」と呼ばれ、このカット法は宝石の持つ輝きを最大限に発揮させる「ブリリアントカット」と透明度を最大限に発揮させる「ステップカット」に枝分かれします。
「ブリリアントカット」
宝石の持つ輝き(brilliant)も最大限引き出すために考案されたカット法です。色を命とする「ルビー」や「サファイア」、「エメラルド」などの色石のためというよりも輝きを命とする「ダイヤモンド」のためにあるといっても過言ではないカット法です。この「ブリリアントカット」はその形状によってさまざまな名称があります。
ラウンド・ブリリアントカット
上から見た時に円形(round)のブリリアントカットで、最も「ダイヤモンド」の輝きを引き出すカットです。
オーバル・ブリリアントカット
上から見た時に楕円形(oval)のブリリアントカットです。
マーキス・ブリリアントカット
上から見た時にラグビーボールのような形をしたブリリアントカットです。
※ちなみに、「マーキス(marquise)」はフランス語で「侯爵」を意味します。侯爵の爵位を得た「ポンパドール夫人」というフランスのファッションリーダーが活躍中に流行したカットなので「マーキス」と冠せられるようになりました。
ハートシェイプ・ブリリアントカット
上から見た時にハート(heart)の形(shape)をしたブリリアントカットです。
ペアシェイプ・ブリリアントカット
上から見た時に洋梨(pear)のような形(shape)をしたブリリアントカットです。
「ステップカット」
「ブリリアントカット」が円形タイプだとすると「ステップカット」は四角形タイプです。「ステップカット」は「ブリリアントカット」のように輝きを最大限に発揮させることはできませんが、透明度を際立たせやすいため、色を命とする色石との相性がいいです。段を踏む(step)ようなファセットカットになっていることがこのカット名の由縁でしょう。
エメラルド・カット
破損防止のために四隅が削られた八角形になっています。
靭性(割れや欠けに対する抵抗力)が低い「エメラルド」にもっぱら用いられたカット法だったためにこの名前となりました。
バゲット・カット
「バゲット(baguette)」は「フランスパン」を意味し、その名の通りフランスパンに形状が似ていることから名付けられています。
指輪などの宝飾品において、メインとなる宝石を際立たせる脇役として用いられることが多いです。
スクウェア・カット
後述する「プリンセス・カット」と似ていますが、こちらはシンプルなファセットが特徴です。
「ミックスカット」
「ブリリアントカット」と「ステップカット」をミックスしたカット法です。「ミックスカット」が登場したのは1960年代なので、比較的新しいカット法です。
プリンセス・カット
「スクウェア・カット」と形状は似ていますが、「ブリリアントカット」がミックスされている分、宝石の輝きを発揮させやすく、ファセットも複雑です。
カボションカット(cabochon cut)
「ブリリアントカット」や「ステップカット」といった「ファセットカット」が宝石の輝きや透明度を発揮させるものに対し「カボションカット」は宝石そのものの光沢や模様を活かす、ファセットを持たない半球状のカット法です。
「カボションカット」が施された宝石の切断面が半円形なら「シングル・カボションカット」、円形なら「ダブル・カボションカット」と言います。
ちなみに、「カボション(cabochon)」には中世フランス語で「頭」という意味があるみたいですよ。人の頭部のように見えることから付いたカット名なのでしょうか。
カットの種類~まとめ~
いろいろとカットの名称が出てきましたので、最後に整理しておきましょう。
なお、今回ご紹介した宝石のカット法は比較的メジャーなものではありますが、ほんの一部にすぎません。
宝石のカット法はまだまだたくさんありますので、興味がある方は調べてみてくださいね。