時計のアレなぜ?コレなに?「”機械式/クオーツ式時計”てなに?」(R3.3/27UP)

機械式時計とクオーツ式時計

現在、我々が日常的に使用している時計のほとんどは「機械式時計」「クオーツ式時計」です。それぞれを詳しく解説するとなるとかなり専門的になってしまいますので、かいつまんで簡単にご紹介します。

機械式時計

機械式時計の内部構造例

「機械式時計」の動力源は「香箱(写真赤枠)」に収められた「ぜんまい」です。使用者が竜頭(りゅうず)を巻くことで「香箱」内の「ぜんまい」が巻き上げられるのですが、その巻き上げられた「ぜんまい」が元に戻ろうとする力で歯車の噛み合わせ(輪列)を動かし、結果として時間表示するための針を動かしています。

一般的に、一度「ぜんまい」をMAXまで巻き上げると50時間前後動作し続けます。そのため、故障でもしない限り、定期的に「ぜんまい」を巻きさえすれば「機械式時計」は半永久的に動くということになります。

もちろん、「ぜんまい」を巻かずに放置しておくと「機械式時計」はいずれ停止してしまいます。そのため、必然的に「ぜんまい」を巻くという作業が必要になってくるわけですが、使用者が竜頭によって「ぜんまい」を手動で回さなければならないものを「手巻式」、その必要がないものを「自動巻式」といいます。

香箱内に収められたぜんまい

「自動巻式」の時計には「ローター(写真赤枠)」と呼ばれる振り子のように動くプレートが取り付けられており、これが着用した腕の動きによって振れることで「ぜんまい」を自動的に巻き上げてくれます。使用者はわざわざ竜頭を巻くという作業から解放されるわけです。

この「自動巻式」には「ローター」が左右どちらに振れても「ぜんまい」を巻き上げる「両方向巻き上げ式」とどちらか一方に振れないと巻き上げない「方方向巻き上げ式」という2つのタイプがありますが、巻き上げ効率的に「両方向巻き上げ式」が主流となっています。

なお、「自動巻式」といっても「ローター」が振れるくらいの動きは必要です。机の上に置きっぱなしにする、腕に装着しているがデスクワークが多い、車や電車での移動が多いなどの場合は「ローター」の振れ不足によって「ぜんまい」が十分に巻き上がらず、針が止まってしまいます。そのため、「自動巻式」の時計にも手動で「ぜんまい」が巻けるように竜頭が付いているものが多いです。

機械式時計内部のローター

クオーツ式時計

クオーツ式時計の内部構造例

「クオーツ式時計」の動力源は「電池(写真赤枠)」です。「機械式時計」のようにわざわざ竜頭を巻かなくても動き続ける点は便利ですが、「電池」の寿命が来てしまえば止まってしまいますので「機械式時計」のように半永久的に動作させることは出来ません。

しかし、「クオーツ式時計」の一番の強みはその精度の高さです。一般的な「機械式時計」は1日に±20秒前後のズレが生じますが、「クオーツ式時計」はひと月に±15~±30秒前後とかなりの高精度を誇っています。

それを可能にしているのが「機械式時計」にはない「水晶振動子(写真橙枠)」「電子回路(写真緑枠)」「ステップモーター(写真青枠)」といった電子技術です。中でも要となる「水晶振動子」「合成水晶(クオーツ)」で出来ているため「クオーツ(水晶)式時計」と呼ばれています。

そんな「クオーツ式時計」は時間の表示方法によって「アナログクオーツ式」「デジタルクオーツ式」の2つに分けられます。

アナログクオーツ式時計

「アナログクオーツ式」はによる時間表示です。動力源は「電池」ですが、針を動かすために「機械式時計」のような輪列を用います。

デジタルクオーツ式時計

対する「デジタルクオーツ式」は液晶による時間表示なので針が不要で、そのため輪列もありません。

これら2つの表示法を1つの時計に融合させた「コンビネーション式」といったものも存在しています。

コンビネーション式時計

秒針の動き方

動力源や内部構造を見れば判断は容易ですが、外見だけでその時計が「機械式時計」か「アナログクオーツ式時計」かを判別するのはなかなか困難だと思います。しかし、秒針の動き方を注意深く観察すれば、わざわざ時計を手に取ったりその内部構造を確認したりせずに判別することが出来ます。

機械式時計の秒針

秒針が流れるように進む「スイープ運針」と呼ばれるものを持つ時計は「機械式時計」です。実は、この流れるように移動する秒針はパラパラ漫画のように1秒間を小刻みに分割しながら動いています。

「この時計は14,400振動(ビート)です。」といった表現を見聞きしたことがあるかもしれません。これは秒針が1時間を14,400回に分割して移動していることを表していますので、これを1秒間に変換すると「14,400/時÷60=240/分」→「240/分÷60=4/秒」となりますので、14,400振動の時計は1秒間を4分割しながら動いているということになります。つまり、1秒に1回秒針が動くオーソドックスな時計の4倍も秒針を動かしているというわけです。

アナログクオーツ式時計の秒針

秒針が1秒をかっちりと刻みながら進む「ステップ運針」と呼ばれるものを持つ時計は「クオーツ式時計」です。

秒針が1秒に1回動く「ステップ運針」は秒針が1秒に複数回動く「スイープ運針」より秒針を動かす回数が圧倒的に少ないため、「電池」を動力源とする「アナログクオーツ式時計」にとってはかなりの省エネになります。

「ぜんまい」を動力源とする「機械式時計」だからこその「スイープ運針」であって、これを「電池」を動力源とする「アナログクオーツ式時計」に用いると単純に数倍のエネルギーを要してしまいますので、「電池」の寿命を早めてしまいます。

このように、秒針の動き方で大体の時計は判別可能ですが、中には「アナログクオーツ式時計」であっても「スイープ運針」を持つ時計やそもそも秒針がない時計など、この判別法に当てはまらない時計もありますので注意です。

機械式/クオーツ式時計のまとめと比較

ここまでの内容を踏まえて、「機械式時計」と「クオーツ式時計」を対比しながら、それぞれのメリット(〇印)とデメリット(×印)を挙げていこうと思います。

機械式時計

〇「ぜんまい」を定期的に巻きさえすれば、故障しない限りは半永久的に動作する

×「ぜんまい」を定期的に巻くという手間がかかる

〇使い方やメンテナンスにもよるが、内部機械の寿命が50年前後であるため長期使用が可能で資産価値が高い

×日差±20秒前後と精度はそこそこ

×高価なものが多い

×修理費用が高い

〇内部機械を露わにした「スケルトン」や「裏スケ」に代表される機械式特有のデザインがある

クオーツ式時計

×「電池」が切れると停止するので、「機械式時計」のように半永久的には動作しない

〇「電池」が持つ限りは放っておいても動作するので手間がかからない

×使い方やメンテナンスにもよるが、内部機械の寿命が10年前後であるため長期使用が困難で資産価値が低い

〇月差±15~±30秒前後と精度は非常に高い

安価なものが多い

修理費用が安い

〇「機械式時計」だと複雑な構造を要する機能が比較的容易に搭載できる

上記に挙げたメリットとデメリットは一部に過ぎませんし、全部が全部当てはまるものでもありません。また、使用者によって時計に何を求めるかは十人十色なので一概には言えませんが、「精度にこだわりたい」「手間なく使いたい」「なるべく安く済ませたい」「便利機能がほしい」といった実用性重視の方には「クオーツ式時計」を、「手間とお金がかかっても大事に長く使いたい」「機械構造にロマンを感じる」といった趣味性重視の方には「機械式時計」をおすすめします。