宝石のアレなぜ?コレなに?「”有機物一家”てなに?」(R3.1/30UP)

有機物の宝石

宝石と呼ばれるものの大部分はこれまでご紹介してきたような無機物(鉱物)です。しかし、宝石には有機物のものもあります。その中でもとりわけよく見聞きする「真珠」「珊瑚(さんご)」「琥珀(こはく)」を簡単にご紹介します。

真珠(パール)家

6月の誕生石として有名な「真珠」という子は「人類最古の宝石」と言われています。なぜこのように言われるかの理由に以下の2つが挙げられます。

最古の宝石「真珠」

・最古から人類にとって重要な食糧であった「貝」から採れるのが真珠であり、この子が採れる可能性はごく稀でも、貝自体の存在は人類の身近にあったため

・採れたそのままの状態でも十分美しく、現代のようなカット技術や研磨技術を持たない最古において珍重されたため

そんな最古より愛されてきた「真珠」の現状ですが、そのほとんどは「養殖」によってできています。

無機物(鉱物)の宝石、例えば「ダイヤモンド」などにも人工的に作られた合成石があり、一般的に「天然ダイヤモンド」は「本物」、「合成ダイヤモンド」は「偽物」という認識がなされます。

この認識からか「養殖」と聞くと「人工物=偽物」といった印象を受けてしまいがちです。実際、「養殖真珠」には人の手が加わっているのだから、厳密には「真珠」ではなく偽物では?といった裁判沙汰もあったりしました。しかし、今では「養殖真珠」もれっきとした「真珠」として認められています。

そんな「養殖真珠」にはいくつか種類がありますので、以下に簡潔にまとめます。

アコヤ養殖真珠(ホワイト系)

アコヤ養殖真珠

アコヤ貝から採れる子で、「真珠」と聞いて真っ先にイメージされるのがこの子だと思います。

三重県伊勢志摩や愛媛県宇和島が有名な養殖地で、国内での養殖が盛んなため「和珠(わだま)」とも呼ばれます。

ホワイト/クリーム/グリーン/グレー系などのカラーがあります。

シロチョウ養殖真珠(ゴールド系)

シロチョウ養殖真珠

シロチョウ貝から採れる子で、「白蝶」と書かれたり「南洋真珠」と呼ばれたりします。

ゴールド/シルバー系のカラーがあります。

クロチョウ養殖真珠

クロチョウ養殖真珠

クロチョウ貝から採れる子で、「黒蝶」とも書かれます。

主にブラック・グリーン系のカラーです。

マベ養殖半形真珠
アワビ養殖半形真珠

マベ/アワビ養殖半形真珠

マベ/アワビ貝から採れる子で、貝殻内側に張り付くようにできるため半円形になります。

淡水養殖真珠

淡水養殖真珠

イケチョウ貝などの湖や河に生息する貝から採れる子で、他の養殖真珠と比べると価格は安いです。

珊瑚(コーラル)家

珊瑚礁

「珊瑚」と聞けば「珊瑚礁」を思い浮かべがちですが、これと宝石としての「珊瑚」は全くの別ものです。

宝石としての「珊瑚」はイソギンチャクやクラゲに似た「コーラル・ポリプ」によって作られる「貴重珊瑚」と呼ばれるものです。

コーラル・ポリプ
血赤珊瑚
エンジェル・スキン

そんな「(貴重)珊瑚」の中で最も高い評価を受けるのは「オックス・ブラッド(血赤)」と称される均一な赤色の子です。また、ヨーロッパでは柔らかいピンク色の子が「エンジェル・スキン」と呼ばれ好まれます。

この「エンジェル・スキン」は日本では「ぼけ」と呼ばれます。これは悪口ではなく、「木瓜(ぼけ)」の花の色に似ているところからきています。

木瓜(ぼけ)の花

余談ですが、「珊瑚」には俗に「むし孔(あな)」と呼ばれる小さい穴がよく見受けられます。天然の証拠ではありますが、埃が入ると汚れるので最近では樹脂状物質や珊瑚の小片で穴を塞ぐ処理がよく施されています。

琥珀(アンバー)家

琥珀

古代(数千万~数億年前)に生い茂っていた樹木の樹脂が土砂などに埋もれて化石化したものが「琥珀」で、いわば「古代樹脂の化石」です。

対して、現存する樹木の樹脂が硬化したものを「コパル樹脂」と呼び、両者を明確に区別します。

コパル樹脂
「琥珀」に見られる「グリッター」

「琥珀」には「グリッター」と呼ばれる独特な煌めきが見受けられることもありますが、これは透明度をあげるための「クラリファイイング(浄化)」という処理の際に生じたものです。

また、体内に植物片などを内包する子もいますが、この子は地質学/動物学上の貴重な資料になる上、造形的に美しければ珍重されます。ただし、プラスチックなどによる模倣品も多いので注意が必要です。

虫入りの「琥珀」(青枠内が虫)