しちビア No.115

Q.主に機械式時計のムーブメントに記載されている“数字+JEWELS”の“JEWELS”は何の数を指す?

①歯車②螺子
③特許④宝石

A.④宝石

まぁ、JEWELだから宝石だろうな~とは思ったけど……今回の場合だと時計に17個も宝石が使われているってこと!?

正確には、宝石から加工された機能的役割を持つパーツを17個使っていることを示す表示だぽこ♪

つまり、その宝石はジュエリーのような装飾目的ではないんだ

主に機械式時計の歯車などの軸受け(ベアリング)としてルビーが使用されていて、その役割は摩擦や摩耗を抑えるという実用的なものなのです

構造をざっくり図にするとこんな感じで、非常に細い軸の先端がベアリングに接する形で長時間にわたって回転し続け、しかも一点に圧力もかかるため、並みの素材だと軸先端もベアリングも摩擦や摩耗、圧力に耐えきれないんだ…

そこで活躍するのがルビーで、ルビーはモース硬度9とダイヤモンドに次ぐ硬度を持ち、摩擦や摩耗による影響を大幅に軽減できるんだぽこ♪

——しかも、化学的に安定していて経年劣化しにくいですし、現代では合成ルビーが安価に大量生産できるためコストも経済的です——

天然ルビーだと破損の原因にもなるインクルージョン(内包物や微小なひび割れ)がつきものですが、合成ルビーならそれを極力排した高品質な結晶を安定的に供給することも可能です…!!

モース硬度10のダイヤモンドじゃダメなの??

ダイヤモンドもベアリングに使われたことがあったけど、ダイヤモンドには衝撃や力が加わる方向によって割れたり欠けたりする劈開性(へきかいせい)という弱点があったんだぽこ…

そんなダイヤモンドのベアリングだと軸先端からの力の加わり方によっては破損する可能性もありますが、ルビーには劈開性がないのです

そもそも、当時の技術ではダイヤモンドをベアリングに加工すること自体が困難かつ高コストだったから、劈開性という弱点も相まって定着化しなかったようだね

——合成ルビーをベアリングに用いるメリットは他にもありますが、要するにベアリングとしての理想的な性能を兼ね備えた究極の機能性材料として合成ルビーに白羽の矢が立ったというわけです——

なるほどね~……あ、でもルビーって確かコランダムっていう鉱物だったわよね?他のコランダム、例えば合成サファイアとかじゃダメなの??

もちろん、コランダムである以上性質は同じだから合成サファイアでもいいし、実際に採用された歴史もあるけど、現在では合成ルビーがベアリングの主流になっているよ

——最後に1つ、面白い競争を紹介するのですが、1960年代にそんな合成ルビーのベアリング数(JEWELS数)の多さを競うように売りにする流れがありました——

JEWELS数が多い=高級・高性能というマーケティング競争が過熱したんだ

例えば、ウォルサムには100JEWELSと謳った機械式時計があったんだけど、そのうち17をムーブメントのベアリング、残りをローター外周などに用いることで実現していたんだぽこ…!!

合成ルビーを豪勢に使ったのねぇ…

こうした競争が激化する中、ISO(国際標準化機構)は1974年に機能する宝石の定義とその表示方法を規格化したんだ

——ベアリング以外にも脱進機の爪石や振り石などでも合成ルビーが機能的に用いられるのですが、これらのような機能的な役割を持たない宝石をJEWELS数として表示できなくなったので、この競争は収束していったのです——

そんな中、現代の超複雑時計Reference57260(ヴァシュロン・コンスタンタン)は驚異的な242JEWELSを搭載しています…!!

JEWELS数が多いからと言って必ずしも高級・高性能ではないんだろうけど、このクラスにもなると結果として242になったっていう感じがするわねぇ…!!