時計のアレなぜ?コレなに?「”時計に求められるもの”てなに?」(R3.4/3UP)

時計に求められるもの

時計に何を求めるかは使用者によってまちまちですが、時計の本分は「使用者に正確な時刻を知らせる」ことにありますので精度が一番大事です。それに伴い、「使いやすい」「見やすい」といった実用性も重要です。しかし、今ではそれらと同等もしくはそれら以上に「かっこいい/かわいいから」「他人と被らないから」「いろいろな機能が付いているから」「丈夫で防水性もあるから」などといった趣味性機能性に重きが置かれる傾向にあります。

時計の趣味性

「文字盤」「目盛り(インデックス)」「針」「ケース」、腕時計に限りますが「留め具」「バンド」など、各部位のデザインや素材の組み合わせによって1つの時計が構成されます。どんな時計を好むかはその時の流行にも左右されますが、主に個々人の趣味性によります。1つの時計としてのデザインの数はもちろんのこと、部位ごとのデザインの数も無限大にありますので、ここでは各部位ごとに5点ずつデザイン例を挙げて紹介していきます。

文字盤に見られるデザイン例

①無地 ②宝石による装飾 ③エナメルペイント ④彫刻(エングレービング) ⑤奇抜

目盛り(インデックス)に見られるデザイン例

①アラビア数字 ②ローマ数字 ③バー(棒)やドット(点) ④宝石による装飾 ⑤漢字や記号

針に見られるデザイン例

①②棒状 ③変化のある形状 ④⑤そもそも針という固定概念に捉われない形状

ケースに見られるデザイン例

①丸形 ②四角形 ③三角形 ④変則的な形 ④⑤宝石や彫刻による装飾

留め具やバンドに見られるデザイン例

①尾錠(美錠)タイプ ②Dバックル(両開き)タイプ ③Dバックル(片開き)タイプ ④革バンド ⑤ラバーバンド

また、主に機械式時計にはなりますが、上記例のような外装だけではなく時計内部の機械部分(ムーブメント)にデザインが施されることもあります。

ムーブメントに見られるデザイン①

直線状の装飾を「コート・ド・ジュネーブ」、鱗のような連続した円形の装飾を「ペルラージュ」と言います。

ムーブメントに見られるデザイン②

熟練した職人による手彫り装飾を「エングレービング」と言います。文字盤やケース、バンドなどの外装に施されることもあります。

時計の機能性

時計の機能性とは時計が最低限果たすべき「時を知らせる」という役割以外の+αの機能のことで、「これが無いと時計として機能しない!」というわけではありませんが、あると非常に便利なものです。具体的にどういったものがあるのかを機械式/クオーツ式時計に分けて、一部ご紹介したいと思います。

機械式時計の機能性

ビッグデイト

ビッグデイト

文字盤に設けられた窓によって日付を表示します。

パワーリザーブ

パワーリザーブ

機械式時計の動力源である「ぜんまい」の残エネルギー量を表示します。

レギュレーター

レギュレーター

時針・分針・秒針を同軸上ではなく、それぞれ個別に表示します。

GMT

GMT(Greenwich Mean Time)

任意の2か国の時刻を表示します。通常より時針とインデックスが1つ多いです。

機械式時計内のてんぷ

★トゥールビヨン

機械式時計は「てんぷ」と呼ばれる人で言うところの心臓によって正確なリズムを刻み精度を保ちます。この「てんぷ」は重力の影響を受けやすいため、精度に誤差が生じがちです。この誤差を極力抑えるために生み出されたのが「トゥールビヨン」と呼ばれる機構です。

世界三大複雑機構の1つである「トゥールビヨン」を筆者ごときが詳しく解説できませんので、イメージでの説明になりますが、「てんぷ」を専用の籠のようなパーツに納めて、「てんぷ」ごと一定周期で一定方向に回転させて重力を分散させてしまおうという機構です。

★ミニッツリピーター

時刻を知りたい時にレバーやボタンを押せば、によって時刻を知らせてくれる機構です。音の鳴り方にはいくつか種類がありますが、動画のような鳴り方が最も一般的です。動画を聴くと音は3パートに分かれていることがわかると思います。※なお、以下の音の表現は筆者の聞こえ方です。

①1パート目…「カンカン」と音が10回10時(1カンは1時間)

②2パート目…「カコンカコン」と音が3回45分(1カコンは15分)

③3パート目…「チンチン」と音が13回13分(1チンは1分)

この3パートによって、この時計は「10時58分」を告げているということがわかります。

照明技術が発達していなかった当時においては、夜間や暗所でも音によって時刻が知れるということで重宝していましたが、現在では音によって時刻を知るということよりも、世界三大複雑機構の1つと言われるその高度な技術や音の美しさが注目されています。

ちなみに、レバーやボタンを押さなくても自動で時刻を知らせる機構を持つものを「グランソヌリ」と言います。しかし、これは「ミニッツリピーター」のような任意の時刻ではなく「毎正時と15分おき(例:3時15分、3時30分、3時45分、4時00分)」といった決まった時刻にしか音が鳴りません。「毎正時と30分おき」になると「プチソヌリ」と呼ばれるものになります。

アニュアルカレンダー

アニュアルカレンダー(年次カレンダー)

月、日、曜日などを表示するカレンダー機能を持つ時計です。1,3,5,7,8,10,12月といった31日まである「大の月」と2月以外の4,6,9,11月といった30日までしかない「小の月」を自動的に認識しカレンダー調整する機構を持ちます。「閏月(2月)」の関係で毎年3月1日に手動で日付調整する必要があります。

その「閏月」をも自動認識し、月初めの「1日(ついたち)」をきっちりと表示するカレンダー機能を持つものは「★パーペチュアルカレンダー(永久カレンダー)」と言います。一般的に2100年2月28日までは無調整で済むように設計されています。その極めて複雑なメカニズムは世界三大複雑機構の1つと言われています。

クロノグラフ

クロノグラフ

ストップウオッチ機能を持つ時計です。竜頭上のボタンで「スタート/ストップ」、下のボタンで「リセット」といった操作が可能です。通常、不具合回避のため計測中はリセットボタンにロックが掛かっているのですが、「フライバック」と呼ばれる機構を持ったものだと、計測中でも瞬時にすべての針を0位置に戻し、再計測を開始できるようリセットボタンが押せるようになっています。

「ラップタイム」といったより複雑な計測が可能なストップウオッチ機能を搭載したものは「★スプリットセコンド・クロノグラフ」と言います。特徴としては秒針(クロノグラフ秒針)が2本ある点です。2本の針(剣)が分かれて(割れて)いる見た目から「割り剣式」と呼ばれたり、フランス語で「(針が針を)追いかける」という意味の「ラトラパント」と呼ばれたりもします。

スプリットセコンド・クロノグラフ

ちなみに、これまでご紹介してきた機能性の中で「★」を付けた「トゥールビヨン」「ミニッツリピーター」「パーペチュアルカレンダー」「スプリットセコンド・クロノグラフ」といった機能のいずれか1つを持つ機械式時計を「コンプリケーションウォッチ」、これらの機能を同時に複数持つものを「グランドコンプリケーションウォッチ」と言います。

クオーツ式時計の機能性

多機能クオーツ式時計の例

クオーツ式時計には「ストップウオッチ」「アラーム」「カレンダー」「GMT」「温度計」「湿度計」「気圧計」「高度計」「計算機」「ゲーム」など多数の機能性が見られます。機械式時計に見られる機能もいくつかありますが、機械式時計だと複雑な機構を要したり、そもそも搭載不可能だったりするこれらの機能をクオーツ式時計なら電子技術によって比較的容易に、しかも高水準で搭載することができます。

機械式/クオーツ式時計共通の機能性

金属アレルギーを防ぐメッキ加工、時計内部への水の浸入を防ぐ防水加工、衝撃による故障を防ぐ耐衝撃加工、磁気による悪影響を防ぐ耐磁加工などは機械式/クオーツ式時計に共通して見られる機能性です。