鑑別書と鑑定書
高価な宝石にはよく冊子のような証明書が付随していますが、これは「鑑別書」か「鑑定書」かのどちらかです。この2つは字面が似ているためかよく混同されがちですが、両者は全くの別物ですので、この機会にその違いを明確にしておきましょう。
鑑別書とは
結論から言いますと、「鑑別書」というのはその宝石が何なのかを判"別"する身分証です。
例えば、赤色の透明な宝石があったとします。よほどの熟練者でもなければ、見ただけで「ルビー」か「ガーネット」か「レッド・トルマリン」か「レッド・スピネル」かの判別は不可能でしょう。(※ちなみに、写真の子は「アルマンディン・ガーネット」です。)
また、高価な宝石の取引においてその宝石の身分をきちんと証明するものがないと「ルビー」と偽って「レッド・トルマリン」を売却するといった詐欺も多発しかねません。
そこで登場するのが「鑑別書」です。この「宝石の身分証」によって「これはルビー…?それとも…?」といったような見た目だけでは判別が困難な子の身元を証明することができます。
また、宝石は「天然石か否か」「人工的な処理(※宝石を加熱して色調を変えるなど)の有無」によってその価値が大きく変わってきますので、それらの要素を明確にすることもできます。
そんな「鑑別書」は指輪などにセットされた宝石にも発行されるのが特徴です。
「鑑別書」は対象となる宝石の「①名字名前②天然か否か③処理の有無」などを記載する重要なものなので、これがあるのとないのとでは信憑性が大きく違います。
鑑定書とは
前述の「鑑別書」は宝石の身分証なのでどの種類の宝石にも(※もちろん「ダイヤモンド」にも)発行されます。対して、「鑑定書(グレーディング・レポート)」は「ダイヤモンド」のみに発行されるもので、「4C」に基づいて対象の「ダイヤモンド」の品質・価値を"定"める「ダイヤモンド」の成績表とも言えるものです。
この「鑑定書」はカットされた&ルース(※指輪などにセットされていない裸の状態)の「ダイヤモンド」にしか発行されません。
もちろん、「鑑別書」同様に「鑑定書」もその有無によって信憑性が大きく変わります。
ちなみに、「鑑別書」「鑑定書」をより簡略化したものを「ソーティング(sorting)」と言います。「sorting=分類する」という意味です。
まとめと注意点
宝石全般の身分証である「鑑別書」も「ダイヤモンド」だけの成績表である「鑑定書」も共に注意すべき点がいくつかあります。
①記載内容と現物の一致の確認
そうそうあることでもありませんが、証明書に記載された宝石と実際の宝石が異なるケースが存在します。また、どちらの証明書にも宝石が持つ欠点(曇りや欠けなど)は記載されていませんので、証明書だけを見て判断せず、現物の状態をしっかり確認することが大切です。
②いつ発行されたものかの確認
主に「鑑定書」の話にはなりますが、発行が古いものはカラー等級の判定の際にカラーの比較基準となる「マスター・ストーン」と呼ばれるものを用いていないのでその記載がなかったり、「GOOD」と「FAIR」の間に「MIDIUM」という判定があったりします。
このように、カラー等級の判定に「マスター・ストーン」が用いられていない、「MIDIUM」というカット等級があるものは「旧鑑定書」とみなされ、信憑性が低くなってしまいます。
そのような「旧鑑定書」でカット等級が「GOOD」という評価がなされていても、カット技術が進歩した現行の判定に照らし合わせると「FAIR」になることが多々あります。
③どの鑑定機関が発行したものかの確認
「鑑別書」「鑑定書」はどの機関のものでもいいというわけではありません。高度な検査・分析による正確な判定ができる信頼度の高い鑑定機関発行のものでないと証明書として認められないケースが多々あります。
一般的に、国際的に信頼されている鑑定機関は「GIA(Gemological Institute America)」「AGT(ジェムラボラトリー)」、日本国内においては「中央宝石研究所(CGL=CENTRAL GEM LABOLATORY)」と言われています。他にもさまざまな鑑定機関がありますが、ひとまずは上記3機関を覚えておくとよいでしょう。